21.苺が好きな女の子は――

2/7
前へ
/316ページ
次へ
 小鳥の瞳の奥を確かめた翔に、すかさず唇を塞がれる。  女の肌に飛びついてきた彼を、小鳥からも両手一杯に抱き返し、彼の唇を懸命に愛した。  それまで、大切に扱ってくれていたんだと思った。今夜、翔の身体は女を捕まえるかのように重く、手先は男の渇望を露わにし、そして口先も舌先も意地悪で獰猛。  でも乱暴とか、もっと優しくしてだなんんて、少しも思わない。むしろ、このまま激しく遠くに連れ去って欲しい気持ちに駆られた。  すぐに頬も熱くなった。身体中が燃えるという感覚も気持ちも初めて感じている。 「はあ、あっ……ん、翔、しょうにぃ・・翔……」  噛みつかれているみたいなキス、そして愛撫。唇から頬、瞳に耳元に首元。情熱的な沢山のキスが降りそそぐ。大きな手が小鳥の黒髪をなんども撫でてくれる。  やがてその熱烈なキスは、首元から胸元、乳房へと降りていくと、湿り気を帯びた熱い吐息をまとわせ、濡れた舌先でじっとりと小鳥の肌を舐めていく。これは男の楽しみ方。男が欲しいものは、こうして手に入れる。それが男の愛し方。男だけの味わい方。あの王子様みたいだったお兄ちゃんが、獣に変化したようにも思えた。  そんな厭らしいことを、清潔そうな顔の下に忍ばせて密かに願っている。そして、そんな獣が小さな雛を手に入れて、その雛がどんなふうに泣くのか意地悪に弄んで楽しむ――。そんな気もした。  なのに……。なにこれ。ぜんぜん嫌じゃない。ものすごい心が弾けるほど胸がいっぱいになる。いっぱいになった胸が灼けついて、今度は焼き尽くされそうな気にもなる。やはり自分も女という獣みたいなものなんだ、きっと。
/316ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2650人が本棚に入れています
本棚に追加