21.苺が好きな女の子は――

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 雛だって、厭らしく感じるんだから。小鳥ももう恥じる前に、男に身体を濡らさせていく甘やかさに溺れている。男の唾液をなすりつけられて、彼のものにされていく。男に抱かれて快楽に朽ちて墜ちていく――。たまらなく気持ちがいい。  小鳥の身体中の味を確認し終えたのか、最後に翔は白い足を持ち上げ、あの夜と同じように、白くて柔らかいところを何度も彼が欲しがっている。あの翔兄が我を忘れて、額に汗を滲ませて何度もキスをして吸っている。そんなに我慢できない顔で愛されていると知って、小鳥の胸はなにもかもが溢れてしまいそうで泣きたくなる。  彼の肌がいつも以上に汗ばんで、普段は微かに鼻をかすめていく程度だったあの匂いが、いまは強烈にそこらじゅうに満ちている。  この匂いを持っている男は今までは一人だけだった。その人が小鳥に『大人の男、女を愛している男の匂いはこういうもんだ』と、幼い時からその匂いだけで教えてくれていた。  また同時に。この匂いに包まれて、襲われて? 甘く優しい魅惑的な香りを放つ女性も知っている。男に愛されたら、女はあんなに素敵になるんだって――。それも知っている。もの心つくころから、それは両親の周りにたちこめていた。  いつか自分も、そんな匂いの男性に出会えるのかな。私はその匂いを見つけられるのかな。感じられるのかな、そんな男の人、他にいるのかな。父ちゃんだけが特別なのカナ? ずっとそう思ってたけれど『見つけた』。  やっぱりこの人だった――。  そして自分は、ちゃんと魅惑的な香りで彼を満足させられるの? まだ子供……。ハジメテで彼をどう喜ばせたらいいかもわからない、大人になりきれない女の子なだけで。
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