21.苺が好きな女の子は――

4/7
前へ
/316ページ
次へ
 なのに。小鳥の白い足にキスを落としながら、男として目指している秘密の園を目の前にして、翔が言った。寝そべって頬を熱くして喘いでいるだけの小鳥を、熱く見つめて言った。 「苺が好きな子は、ほんとうにイチゴみたいな匂いがするな」  喩えだとわかっている。でも。そんな甘い匂いがすると言ってくれる。小鳥が憧れている『愛されると身体から放たれる大人の女の匂い』。その匂いを大人の男が存分に愛してくれる。  いまが、その瞬間。  甘いイチゴの匂いがすると言いながら、その匂いがするという蜜を探している。  苺が好きな女の子が湛えている甘い蜜を見つけ、彼が勝ち誇ったようにふと静かな笑みを見せた。 「もう大丈夫そうだ」  彼の声もくぐもるほど、息づかいが荒くなってかすれていた。  この前と同じ。彼が意を決した準備をすると、またお互いの汗ばんだ身体を上と下にぴったりと重ねてきた。  優しい息づかいになった彼が覆い被さりながら、小鳥の黒髪をかき上げ、その顔を覗き込む。小鳥の瞳をみつめて、ついにその時という緊張をしているのがわかった。  だから。小鳥から彼の背に抱きついて、彼にキスをした。『小鳥』。彼の唇から小さく漏れてきた吐息。小鳥は目をつむって、ただひたすら彼の背中に抱きついて、彼の唇を深く長く愛し続ける。彼も同じようにキスを返してくれる。  ぴったりと重ねられた熱い肌、貪るようなキス。ほどけない腕――。  開かれた足と足の間になにかが迫っていることなどもう……。我を忘れて彼とキスをして抱き合う。
/316ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2650人が本棚に入れています
本棚に追加