2.お兄ちゃんが待ってる

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 ずうっと小鳥の片想いを見守ってきてくれた花梨ちゃん。真っ先にいちばんに報告したかったのに、まだ自分でも信じられなくて、実感が湧かなくて。そして、恥ずかしくて、照れちゃって、今日になってしまった。  そして今夜――。どうなるのだろう。  せっかくのお洒落もせずに、普段着。そのまま小鳥はシートベルトを締めるとエンジンキーをまわし、サイドブレーキを下ろし、アクセルを踏んだ。  いまどきの大学生が乗っているには珍しい、90年代親父世代のスポーツカー。そのエンジンをひときわ高く唸らせ、小鳥はハンドルを回す。  メッセージはもう一件、あった。 【さっき仕事が終わって自宅に戻った。サークルの誕生日会、大丈夫か。悪ふざけがエスカレートしないように気をつけて】  彼が待っていてくれる。小鳥は港へ向かう。龍星轟のちかくにある港町、そこに翔は住んでいる。
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