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「し、知らなかった。ほんとうにわからなかった。だってお兄ちゃん、ぜんぜんそんな顔しないし様子にも出さないし、一緒にいたってそんなことひとことも」
だけれど、そんな落ち着きでクールな横顔に固めてしまうのが『この人』だと小鳥もわかっていた。だけれど、やっぱりわかりにくい!
「そんな、いつも会えるところはカノジョの親父さんでもある上司がいる職場で、カノジョにとっては家族がいる自宅。そこのお嬢さんを相手に仕事そっちのけでイライラする様子なんて見せられるもんか。しかも、大学生の若い男を相手に嫉妬丸出しにするなんてみっともない。好きな女にそんな小さい男だって見られたくないだろ。これでも必死だったんだからな、この二年」
えー。じゃあじゃあ。あの誕生日五日前にお兄ちゃんがフライングをして小鳥の肌を愛してくれたのも、私が我慢できなくてキスしちゃったのも、もうあの時には二人揃っていっぱいいっぱいだったんだとわかり、本当に突然小鳥ちゃんが女になったわけでもないんだと、やっと落ち着いてくる。
「小鳥。だからもう子供だなんて……言うなよ」
「う、うん」
「他の男だって、女に見えているんだから。これからは大人の女の気持ちで、ちゃんとしろよ」
「うん、わかりました」
それでもきっと。まだ社会人として未熟なところ、大人の女性として経験していないことは、ずっとお兄ちゃんに助けてもらっていくんだろうなと思いながら――。
だけれど今夜、私は大人のカラダになって、彼が愛してくれる甘い匂いの肌で彼に抱きしめてもらっている。
だから、私からも――。小鳥も彼の顎先に指先を這わせ唇を寄せた。
「翔、だけだよ。ずうっと翔だけ……。これからも」
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