2651人が本棚に入れています
本棚に追加
愛してる。なんてまだ言えない。でもそんな気持ちで小鳥から彼の唇を愛した。
彼からもお返しの、熱くて深いキス。抱きしめられていた身体が、ふたたびシーツの上に寝かされた。
「さすがに疲れた……。すこし休もう」
「うん」
大きなベッドの真ん中、素肌で抱き合った。
この家は、とても静か――。
椿さんが終わっても、まだ夜中はきりこむ冬の空気に覆われている。
でもここだけは温かくて。とても安心する匂いに包まれていて。
微睡みが優しく小鳥の中に忍んできた頃。大切そうに身体を抱きしめていてくれた彼のほうが寝息をたてていた。
なにもかも終わって彼の顔もやっと穏やかになって眠っている。まだランエボに乗っていた後輩との決着が残っているけれど、あの乱暴な車はもう誰も襲わない。翔兄が闘ってくれたおかげ。小鳥のことも、やっとハジメテ繋げてくれた。
彼の失ったもの、手に入れたもの。そんな忙しい一夜だったに違いない。
時計を見ると――。
小鳥は静かに素肌の身体を起こし、翔に気付かれないようベッドルームを出た。
―◆・◆・◆・◆・◆―
いつもの服をまとうと、いつもの自分に戻った。つい先ほどまで、自分ではなかった。そんな気分。
でも……。あんな大人みたいな女になるだなんて。
それは二十歳になったばかりの小鳥には夢のようなひとときだった。
彼はベッドルームで静かに眠っている。素肌のままぐっすりと。寝付きもいいけれど、目覚めもいいほう。なんて言っていたけれど、やはり今夜はよほどに疲れきっているようだった。
テーブルの上に置いてあるMR2のキーを手に取った。
最初のコメントを投稿しよう!