23.いつのまにかレディ

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 うんと好きだった人への想いは、時が経っても大切なもの。瀬戸田という男の人だって同じで、だから彼に少しだけ同情はしていた。  翔兄は黙って聞いてくれた。でも父ちゃんはそうではない。 「大阪の商社マンと聞いて、やっとあいつの腹がわかったわ」  え。どういうこと? 商社マンと知っただけで、なにもかも見通した英児父の眼が燃えている。それは男への怒りなのか、おめでたい娘への怒りなのかよくわからないけれど、急に怒っている。 「ほんとうのエリート商社マンはな。自分の首を絞めるような選択はしねえんだよ。あんな犯罪まがいな行動を選択した時点で、もう終わっているんだよ。都会の仕事ができる会社員だったなら、地方の走り屋にムキになっている暇なんかねえはずなんだよ」  ではあの瀬戸田という男はどうしてあんな暴挙に? 小鳥が尋ねることをわかっていたように、英児父が続ける。
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