23.いつのまにかレディ

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「あの瀬戸田という男は、それだけ憂さを晴らす場所を探していたってことだ。瞳子さんも翔も、なにもかもアイツの都合の良いこじつけにされているだけだ。おそらくなにもかも上手くいっていなかったんだろう。転属してきたのも経歴を積む修行を兼ねた転属ではなさそうだ。おそらく『意にそぐわない出向』か『左遷』だろう。あの気性だから仕事関係がうまく行かなかったんじゃないか。瞳子さんのことだって急に思い出したんだろ。彼女なら優秀な自分のことを今なら認めてくれるかもしれない。なんだその自信のない選択は。エリートなら女のほうから寄ってくるわ。それを学生時代の遠い想い出の女にしか自信がねえってことはよ、つまり、あの男は瞳子さんのこともバカにしてるんだよ。その見下して近づいた瞳子さんに逆にバカにされたんだろ。その腹いせが今度は翔に向いたような気がする」 「それって……。じゃあ、瀬戸田って人は瞳子さんに近づいていたってこと?」 「もしかすると。瞳子さんが翔のところに急に逃げてきたのも、あいつにつけ回されていたかもしれねえな」 「え、でも。それなら旦那さんに相談すれば……」  まだわからずに首を傾げると、そこは父がおかしそうにふと笑った。 「やっぱおまえはまだ子供だな」  そりゃ父ちゃんから見たらそうでしょうと小鳥はむくれた。せっかく今夜、大人の女になれたと思ったのに気分台無しだった。 「女心ってヤツだろう。それだけ……瞳子さんとご主人はまだ信頼関係が出来上がっていないんだろう。形だけの夫妻、だから相談ができず、できそうな翔のところに逃げてきたのかもしれねえ」
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