23.いつのまにかレディ

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「もう。エンゼルにぶつかってきたランエボの男とまた遭遇したなんてお父さんから聞いて、小鳥ちゃんが乗っている車がまた狙われて壊されるんじゃないかと、お父さんが助けに向かってもお母さん心配で心配で――」  安心してくれたのか琴子母は両手で顔覆い、その目に涙を滲ませていた。  龍星轟の男達が追っている危険な車、その危ない作戦に娘が巻き込まれて、その帰りを待っていることしかできない琴子母の気持ち。『待つことしかできない母の気持』なんだと申し訳なく思ったのも『一瞬』。 「いてもたってもいられなくなって、お母さんもゼットに乗ってダム湖まで追いかけていこうとしたのよ」  えー!  小鳥は目を丸くして、しとやかな母を見下ろした。そんな、お母さんがそんなゼットをぶっ飛ばして娘の元に駆けつける姿なんて、想像できない! 「なのに。英児さんが『それだけはやめてくれ』なんて言って行かせてくれないの。聖児と玲児まで『危ないから行くな。お母さんがいるだけで父ちゃんが集中できなくなるから』と言って止めるのよ」  英児父が龍星轟を出発するその時、この自宅でも一悶着あったということになる。飛び出そうと突っ走る琴子母を、父と弟たち『男三人』で必死に止めたようだった。  小鳥は絶句していた。そして英児父が言ったとおり!? 『琴子は無茶をする』というのは本当だった? もしかして、それを元ヤンの父ちゃんが上手く受け止めて抑えていた?? 初めて知った母の熱い姿だった気がする。 「我慢して我慢して、やっとお父さんから『なにもかも終わったから大丈夫。小鳥は後から帰ってくる。翔と一緒だから安心しろ』とだけ連絡があって。なのに小鳥ちゃんは帰ってこないし……」
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