23.いつのまにかレディ

8/8
前へ
/316ページ
次へ
 同じ気持ちよ。そう伝えてくれ、小鳥は再び驚きを隠せない。  そして気がついた。そうなんだ。きっともう……『子供』とは思っていないんだ。『女性』として接してくれているんだと。  そう思ったら、急に涙が溢れてきた。 「お母さん……お母さん……」  ランエボの男も怖かったし、翔兄と一緒の戦いも怖かったよ。それにあの男の狂ったような暴力も怖かった。  それに。大人のカラダになった幸せもあるけれど……。でも、それも怖かったよ。本当は。誰にも相談できない、男と女ふたりだけのヒミツは、大人だから一人で決めて一人で向き合わないといけない。  もう甘えられない。彼を好きになって、彼の大人の恋人になることは、両親に言えいないことが増えること。そして本当に、この人達から私は離れていくんだと急に思えたから。 「湿布、貼ってあげるからいらっしゃい」  結局、この腫れた頬を最後に労ってくれたのは母の手だった。  あれ? もしかして翔兄も父ちゃんも、そう思って最後にお母さんに手渡してくれたのかな? そんなふうにすら思えた。  湿布を貼る琴子母が最後に笑った。  相変わらずやんちゃでも、いつのまにかレディさんね――と。
/316ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2651人が本棚に入れています
本棚に追加