24.車より大事なもの

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「そう思ったのなら、『自分のこれまでの行いが引き寄せた』だけで起きたと思うはずはない。おまえなら、どうして今回こんなことになったのか『見通し』できているはずだ。あんな十年前に会ったきりの男がよ、いきなりおまえに逆恨みなんておかしいだろ」 「そいつの腹ってやつですか」 「そうだよ。それを言え」  きつい命令口調だった。英児父があの元ヤン特有のガンとばしをして翔を威圧する姿が小鳥には見える。 「俺の部屋に瞳子が二年ぶりに来たと同時に、瀬戸田が現れた。この二つの出来事が繋がっている気がしてなりません」  落ち着いた彼らしい冷静な答え方。なのに昨夜の彼は何ともない顔で、でももっともっと深いところで、そんなことは予測済み。英児父が既に思い描いていたような『このトラブルの図式』を描ききっていた。  それでも、小鳥には、優しく微笑んで深く抱きしめてくれた。もうなにも心配ないんだと、もうなにも怖がらなくていいのだと。当たり前のように彼に抱きしめられていたけれど、琴子母に抱きしめてもらう前に、もっともっと安心させてもらっていたのだと気がついてしまう。 『お兄ちゃんだから』。甘えていたんだ。当たり前になっていたんだ。恋人になったばかりかもしれないけれど、もう翔とは十年近くここで一緒に歳月を過ごしてきた。年上の大人のお兄ちゃん、そんな甘えは日常になって……。  私、これからもっともっと……。  改めて、彼の隣にいる女としての気持ちを思っている中でも、男達の話は先に進んでいく。 「安心したわ。それぐらいの『裏』が予測できなくては、おまえに店の管理なんて任せられねえからな」
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