25.純情バカ娘のケジメ

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25.純情バカ娘のケジメ

 無事に大学での一日を過ごし、いつも通りに小鳥は真田珈琲本店へとアルバイトに向かう。    この時、小鳥は『自分の甘さ』を既に噛みしめていた。  頬に湿布を貼った姿で歩くことがどんなことであるか。小鳥は久しぶりの視線を向けられていた。  喧嘩? 男に殴られたの? それとも元ヤンのお父さんが?  男勝りの滝田さんが誰かに殴られた顔で歩いている。すれ違ったその後、小鳥の背に微かに届く囁き。 『なんで休まなかったのよ。こういう時、女の子は休むの!』  昨夜の事情を報告した花梨にも、こんな恰好でも平気な顔で大学に来たことを怒られた。 『今朝、車を運転していて思っていたんだけれど。これでバイトに行くのは、やっぱりまずいよね……』 『あたりまえじゃん! 小鳥ちゃん、無茶だよ。真鍋専務も真田会長も怒ると思うよ』  客商売だよ、客商売! 歩いているだけで女の子達があんな目で遠巻きに噂しているのに、お店に変な空気をまき散らされたくないでしょう。親友にも『まずい』と言われ、小鳥はひさしぶりに『後先考えずにやったことで、どれだけ迷惑をかけるか』を思い知ることになった。  必死だった。翔が殴られるところを見たくなかった。そのために、自ら傷ついたことは後悔はしていない。  だけれど『それをしたことで、その後どうなる』は、まったく考えていなかった。  海沿いの国道を走っている間、運転するフロントに浮かぶのは真鍋専務の怒り顔だった。 ✿・✿・✿  出勤をして控え室で着替える前に、小鳥は事務所にいるだろう真鍋専務に会いに行く。 「失礼いたします。滝田です」  ドアを開けると、真田美々社長と真鍋専務がいつも通りに控えていた。
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