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アルバイトの小鳥が訪ねてきて、その顔を一目見たお二人の表情が固まった。
「小鳥、どうしたのその顔!」
今日も女っぽいスーツを着こなしている美々社長がデスクから立ち上がる。
「おはようございます。お知らせしたいことがあって参りました」
一礼をして顔を上げると。そこにはもう険しい目線だけを向けている『おじさん』がいた。
もうなにもかも察しているような目だった。英児父からもう聞いているのか、いないのか。
「どうしたその顔は」
まずは専務も小鳥を問いただそうとしている。
「先日お話しした私の車に衝突してきた運転手を、父と従業員とつきとめました」
また美々社長と真鍋専務が顔を見合わせながら、息を止めた顔。
「運転手を捕まえたということなのか」
「はい。勝浦で遭遇して、父の指示でダム湖に追い込んで……それで……」
「まさか。小鳥……、お父さんと一緒にいて、その悪い男に殴られたの? どうしてそんなことになったの! 滝田社長も一緒にいたのでしょう!」
父親が傍にいて娘が危険な目に遭うとは何事か。同じ娘を持つ母親として、美々社長がいきりたった。
真鍋専務はますます冷たい目。だけれどその奥に怒りを潜ませているのが小鳥にはわかった。
「親父さんも手に負えないような無茶をしたんだろう。小鳥らしいじゃないか。そうなんだろう?」
子供の頃から、真鍋兄弟や弟たちに混じって『やんちゃな遊び方』をしていた小鳥の性質をよく知っているおじさん。あの元ヤン親父が防げなかったなら、それしかないと確信している。
小鳥も観念する。
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