25.純情バカ娘のケジメ

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「はい……。その、一緒にいた従業員のひとりが殴られそうになったので、それが嫌で止めに入ったら、その拳が私にあたりました」 「ほらな。火に飛び込むんだよ、この娘は。自業自得だ」  デスクにバンと手をついて、真鍋専務が立ち上がる。  バンと机を打つ音は、昨夜、英児父にも聞かされただけに小鳥はそれだけで何とも言えない恐怖を覚えた。  ワイシャツにネクタイというスタイリッシュな姿で、『知り合いのおじさん』という顔の時は落ちいた雰囲気の穏やかな人。元ヤンだった英児父とは全く違う優等生として歩んできたらしいおじさん。だけれど、立ち上がったその人が睨む眼は、英児父と同じ気迫を放っていた。 「店へ出る前に、よくここに来たな。もしなんの報告もなしに、その顔で店に出ていたらクビにするところだった」  涼おじさんが本気で怒っている声に、小鳥はさすがにゾッとした。  危なかった。『大丈夫。痛い思いをしたし嫌な思いもしたけれど気にしない。今日も頑張って笑顔で元気に働ける』と本気で思っていた。もし、気がつかなかったら? 親友のアドバイスがなかったら? 子供の頃から憧れていたこの職場と縁を切らなくてはいけないところだった。 「自分がどうか、ではない。うちの仕事は、お客様がどうかだ。滝田自身にどんなに嫌なことがあっても、自分はそれでも頑張って元気に働ける根性があると自負できたとしても、お客様にはスタッフ自身のことなど関係ない。おまえの自己満足だ。いいか。お客様の大事なひとときに、影をちらつかせるものなど『店内』には一切持ち込むな。たとえ、おまえが、家族同然に思っている実家の従業員を助けたことが正しくてもだ!」
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