25.純情バカ娘のケジメ

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 全てが尤もすぎて、小鳥は項垂れるしかなかった。  また、頬がズキズキと痛んできた。今度は浅はかだった自分を責める痛みだった。 「真田会長の言葉を覚えているか、本気でバリスタを目指すのなら、その腕を大事にしろと。バリスタにとって両腕は大事な商売道具だ。そういう身体の管理ができることもプロには大事な要素だと覚えておけ」 「はい、申し訳ありませんでした」  そして決定的なものを告げられる。 「今回はその顔で店に出てはいけないことがわかっていたようだから、それに免じて『謹慎一ヶ月』で許してやる」  謹慎一ヶ月――。その間はバイトに出てくるなということになる。  毎日のやり甲斐でもあったアルバイト、そして腕を磨ける場所だった。さらに小鳥の脳裏には『シフトに穴を空ける』ということも浮かんできた。  後先考えなしにやったことで、その後、どのようなことになるのか。翔という大事な人を守れたのかもしれない。だけれど、今ある自分の責任というものはまったく意識していなかった。 「わかりました。本当に申し訳ありませんでした」 「次シフトの連絡をするまで店にでなくていい。帰っていいぞ」  普段はそれほど感情を荒立てない真鍋専務の憤る姿に、美々社長の方が間でオロオロしている。 「真鍋君、そんな、まだ小鳥は大学生でアルバイトじゃない。謹慎だなんて社員じゃあるまいし、事務所で手伝って欲しいことだって沢山あるわよ」  そんな上司である美々社長にも、真鍋専務は恐れずに険しい眼を向けた。
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