25.純情バカ娘のケジメ

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 小鳥はむっくりと起きあがる。ベッドの縁に座ると、翔もその隣に静かに座り寄り添ってくれる。 「真鍋のおじさんも、そう言っていた。滝田社長は判っていて、娘に何も言わずに、真田珈琲に委ねてくれたんだって……」 「うちの社長と真鍋専務はそんなところ良く通じているな。父親同士だからかな。……そうだな。俺から『小鳥は悪くない。俺を助けてくれたんだ』と説明をしに行きたい。だけれどな、俺も客商売をしているから、真鍋専務の言いたいこと解るんだ。そう思うと、やはり小鳥には申し訳なさでいっぱいだ」 「ううん。私……。これで良かったと思っている。いままで本当に、自分が思ったことを貫くことばかり考えて、後先考えずに飛び出していたけれど。それをすることで『後にどのようなことが起きるか』なんて考えたことがなかった。そうしなさいと言われても、そうする必要もないと甘えていたの、きっと。それがどういうことか、ほんとうに良くわかったもん……。だからいいの」  それでも翔に話している内に、また涙が溢れてきた。だけれど、ここなら泣いてもいいとも思って小鳥は我慢はしなかった。 「家に帰って泣くと……、弟たちも気にするし、お母さんも心配するから」  隣で翔が小さなため息をついて、でも柔らかに微笑みながら小鳥の頭を撫でてくれた。 「そうして今まで『我慢強い、しっかり者の元気な娘』を頑張ってきたんだろ。いつもは部屋で泣いていたのか。それとも車を飛ばしていたのか」  小鳥がどんな娘かよく知ってくれていて……。そして『いつもは元気な女の子だけれど、泣きたい時に泣けないんだろう』と、親にも弟にも見せたくないその弱さを翔は見抜いてくれている。
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