26.やんちゃ娘と淑女

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「昼間は元気いっぱいの女の子のまま。なのにベッドの上では男に従って淑やかに大人しい顔をしたりして。そんな時だけしっとり女の顔で男をそそる、無意識に罪な顔する。それで『痛い痛い』でも『好き好き』なんて抱きつかれたら、男はそりゃあ堪らないって話。ベッドのほうが女らしいなんて、やってくれるよな」 「ベッドのほうが、女らしい? ……なんか複雑なんですけど……」  女として見える時の自分が思っていたほど酷くはなかった、むしろ、あの顔はそそられると言われ小鳥は頬が熱くなる。嬉しいような、恥ずかしいような、そんな褒められ方でいいのか困ってしまう。 「だから言っただろう。他の男にも気をつけろと。ま、俺も危ないんだけれどな」 「ゆっくりできないじゃん。お兄ちゃんの部屋でも、そんな意識しちゃうもん、私も」 「大丈夫。今日、泣いてやってきた女の子を性欲の餌食にするような馬鹿な男にはなりたくありません、俺も」  性欲の餌食なんて。またすごい喩えが出てきて小鳥は絶句した。  やっぱりお兄ちゃんは男なんだ――。改めて『翔兄も、もうお兄ちゃんのつもりはないんだ』と、さりげなく『男の性欲とは』を教えてもらったようなかんじ。 「冗談はこれまでな。本当に、いつ来ても良いから」  そして最後、実家の龍星轟の事務所では涼やかな一重の眼差しが、優しく緩んだ。 「どこでも泣けなくて、俺の家に来てくれて、本当はすごく嬉しいんだ。これからもそうしてくれ」 「うん、そうする。ありがとう、翔兄」  アルバイトを謹慎になって辛いけれど、でも、小鳥は大事なものを手に入れた気持ちになれた。
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