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『もう知らない』、『だからなんだよ』と言い合いながらワックスがけをしていると『そこ、仕事中に仲良くするな!』と留守番監督中の矢野じいに事務所から怒鳴られてしまった。
高橋ジュニアの黒いランサーエボリューションがピカピカになった。
「明日。取りに来るってさ」
事務所で、二人揃って彼に連絡をした。
高橋ジュニアも、小鳥が巻き込まれて車をぶつけられたり、犯人の男に殴られたことを父親から聞いて知っていたらしく、電話口で心配してくれた。
その時、彼がこんなことを小鳥に言った。
『俺なんかより、小鳥のほうが被害者だろ。どうする? 親父達が警察に被害届とか民事の裁判とか、妙なこと話し合っているみたいだけど』
『ミキオ兄さんは、どうするの』
『わかんねえ。正直、腹は立つけど、後々めんどくさいことにはしたくない。なんか、すげえ思いこみの激しい男らしいじゃん? 逆恨みとかなんとか親父が心配している。保険屋が間に入って損害分を取り戻すだけでいいんじゃねえかとかさ……』
それで小鳥はどうするかと、龍星轟側ではどう被害を受け止めているのかと気にしているらしい。
側でその話を聞いていた翔も戸惑っていたが、そこは武ちゃんが、若い二人の落ち着かない気持ちを宥めてくれる。
「被害に遭うというのは、そういうこともあるんだよね。簡単に勢いで、正当な仕返しをしてお終いというわけにいかないんだよ。加害者の素質もよく見て決着つけないとね。怒り任せが実は一番危ないことなんだ。そこは親父さんと顧客筆頭の高橋さんがうまくまとめてくれるよ。弁護士も御曹司の南雲さんからの紹介で、長年顧問をしてくれているから大丈夫だろう」
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