27.胸を張って、見せつけろ

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27.胸を張って、見せつけろ

 夕方、英児父がスカイラインで龍星轟に帰還する。  翔兄や整備士兄さん達がピットで整備にオーダーチューンをしている中、小鳥は事務所で矢野じいと一緒に、春キャンペーンのダイレクトメール作成を手伝っていた。 「おう、ただいま。店番、ありがとな」  武智専務と矢野じいに『ただいま』の挨拶をすると、英児父が小鳥を見た。 「翔を呼んできてくれるか。二人に話したいことがある」  言われて、小鳥は素直に頷き、ピットへ彼を呼びに行く。  社長デスクに珈琲片手に落ち着いた英児父の前へ、二人揃って向かった。  瞳子さんに会ってきた英児父……。何を聞いてきたのだろう。  翔も緊張をしているのが伝わってくる。小鳥も呼ばれて、二人揃って報告するその話はいったいどんな話なのか――。 「瞳子さんに会ってきた。今日、ちょうど、旦那さんが出張とかで、また赤ん坊抱いて出てきてくれたわ。真田珈琲の本店で待ち合わせた」  いま小鳥が出ることが許されていないアルバイト先で……。いや、信頼できる知り合いがいるからなのか、とにかく瞳子さんと英児父がそこで向き合ってきたとの報告。  しばらく、英児父が黙っていた。そして、小鳥ではなく父は翔を見上げていた。 「翔。思った通り、おまえのせいじゃなかったぞ」  それでも翔は愕然とした顔をしていた。それは『無実のまま巻き込まれたショック』? それとも『前カノが、あの男と関係していたショック』? 小鳥には解らないが、どちらにしても翔にとっては思わぬことなのだろう。 「あの男。やっぱり瞳子さんにちょっかいだしたらしい。瞳子さんも心弱っていたから、ちょっと隙を見せてしまったようだな」
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