27.胸を張って、見せつけろ

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 これでお兄ちゃんの存在が、あいつを壊しただけではないと解り、小鳥も笑顔になりそうになった。だが隣の彼が肩を落とし神妙なままだった。とても喜べる気分ではないよう……。 「そう……でしたか……」 「しつこい瀬戸田に、瞳子さんは『どうせ夫以外の男とどうにかなるなら、翔のところに行く。翔はまだ一人だからきっと受け入れてくれる』と何度も言ったらしい。あの男は、瞳子さんに賭けて、二度もおまえという男に負けたんだ。その逆恨みがおまえに向いたようだな。元恋人同士、別れたくせに人妻になった女を略奪する悪い男ってわけだ、おまえは」  なんという『本人不在という場での押し付けか』と、小鳥は絶句した。瞳子さんは逃げる場所に翔を使い、瀬戸田は恨みの矛先を侮辱した女ではなく、彼女をかばうだろう男へと向けた。  ついに。翔の拳が震えているのを小鳥は見る。 「俺はなにも……」  いつもの静かな声が震えている。震える拳は、激昂を抑えるため。 「俺は、瞳子をかばってもいないし、やり直そうとも思っていなかったのにですか……」 「そうだ」 「彼女と瀬戸田のいざこざなのに、何年も会っていなかった俺が最後に恨まれるんですか……」 「そうみたいだな」 「俺だけが痛い目に遭うならまだいい。なのに俺がいるだけで、ここの顧客を巻き込んだ。お嬢さんを酷い目に遭わせた。社長、どうしてですか。どうしてこんなことになってしまったのですか。俺は、どうすれば良かったんですか」  そして、小鳥はさらに言葉を失う。茶々をいれたがる武智専務も矢野じいも、静かに黙って翔を案じた眼差しでみているだけ。  英児父だけが、毅然とした目つきで、はっきりと翔に告げる。
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