28.ママに似てきた?

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 うわー。元ヤンの親父さんに豹変している。小鳥と武智専務は揃って震え上がったが、元祖ヤンキーと言われている矢野じいも負けていなかった。 「なんでえ。クソガキ。おまえだって、若けえ時の話、娘に胸張って話せねえのかよ。おう、てめえこそ、こっちこいや」 「おう、クソ親父。こっちこいや」  ガンとガンがぶつかり合った。そのガンとばしでお互いの眼を捕らえたまま、英児父と矢野じいが事務所の外に出て行った。 「うわー、うわー。武ちゃん、やばくない? 父ちゃんと矢野じいがマジ喧嘩するなんて、私が子供の時以来だよね」  事務所のガラスドアから二人の背中を追うと、最後に英児父のほうがジャケットの襟首を矢野じいに掴みあげられガレージに消えたのが見えた。 「……わ、矢野じい。本気かもよ。あれ」  一緒に覗いていた武ちゃんも焦った顔。  ガレージから矢野じいの怒声が微かに聞こえてきたけれど、なにを叱られているのかわからなかった。 「まだまだってことだね。タキさんも。お父ちゃんとしても、矢野じいのほうが先輩だもんなー」  矢野じいも娘がいるお父さん。もう孫も大きくなって成人しているだけに、英児父より先に『複雑な男親心』を噛みしめてきたのだろう。  そう思うと……。先ほどの、英児父の遠回しな煽りも腹立たしくなくなってしまった。 「矢野じい。なんて怒っているのかな」
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