29.大人のお別れ

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「彼に自慢してもらいたい素敵な恋人になりたくて。自慢できる彼になってほしくて。それが叶わなかったらそこから逃げて、それを叶えてくれそうな男性に愛もないのに身を投げたのよ。身を投げたのに、それに見合う完璧な結婚生活にならない。夫と気持ちが通じない。私がやってきたのは、この年齢にはこうなっていなくちゃ……というハードルを跳んできたことだけ。だんだん躓くようになって、うまく飛べないのは、また夫のせい。ひとりで怒って文句を言って、また……自分に都合の良い男の人に……私は……!」 「じゃあ。ご主人に知られてもいいと……?」  心配そうに翔が尋ねる。 「相手がこれだけのことをしたんだもの。私だけ知らない顔なんてできないじゃない」
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