30.小鳥と次にやりたいこと

1/9
前へ
/316ページ
次へ

30.小鳥と次にやりたいこと

 瀬戸田という男に隙を見せて甘えてしまったこと、瞳子は夫に知られてもいいようなことを言いだし、さすがに翔が言葉を挟んだ。 「だが、どう考えても瀬戸田が短絡的すぎるのが原因だ。たとえ、瞳子が引き金でも……」 「関わらなければ。そちらのお客さんの車が何台もぶつけられて、なんの関係のない小鳥さんが真っ正面から翔と間違えられてぶつけられて、二年も会っていなかった翔が狙われることも、翔を助けようとして小鳥さんが殴られることもなかった」  あの乱暴な男は、私が呼んだのよ。  彼女が言いきった。翔の言うとおり、あの瀬戸田という男が人妻に振られただけで終わっていればなにも起こらなかったとも言えるし、瞳子さんの言うように、人妻の自分がまったく相手にしなければ、あの男が逆恨みの炎を燃やすこともなかった。 「短絡的なのは、瀬戸田君じゃないの。私だったの」  疲れ果てたため息を大きく吐くと、彼女はさらに教えてくれる。 「彼を拒絶してからしばらく連絡がなくて安心していたんだけど。翔の部屋に二年ぶりに訪ねる前の晩に、瀬戸田君からメールがあったの。『いい加減な瞳子さんは、きっと痛い目に遭う』と。だからって出てこいとも会ってくれともなくてそれっきり。でも怖かった。また公園に来ているかもしれない、家を知られているかもしれない。でも夫も実家も留守で、怖くなって次の朝早くに外に出たの。なるべく人が多い市駅のデパートで時間を潰していたんだけれど、夜になってこれから閉店の時間になったらどうしたらいいんだろうって――。それで、つい、翔のところに……」
/316ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2654人が本棚に入れています
本棚に追加