30.小鳥と次にやりたいこと

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「そうだったのか。あの晩だ。小鳥がMR2をぶつけられたのは」 「聞いたわ。痛い目に遭うって……。瀬戸田君も、その夜はダム湖にいるだろう翔を探して、最初から体当たりする決意だったのね。だけど、昔の翔の車には女の子が乗っていた……」 「だから、気がついた瀬戸田は一発だけ当てて去っていったのか」  なにもかもが結びついていく。小鳥が知らない『お兄ちゃんとお姉さんの学生時代』の世界。小鳥はそこにいつのまにか紛れ込んでいたらしい。  そんな彼女が小鳥を見た。そして深々と頭を下げてくれる。 「ご迷惑をおかけいたしました。ほんとうに、ごめんなさい」  別に。彼女に謝って欲しいことなどなにもなかったのに……。 「私が謝って欲しいのは、瞳子さんよりも瀬戸田という男の人です。許せないんです。私たちが好きな車を使って、私たちの愛車を次々と潰そうと思い付いたその心根がいちばん許せない。その前に、男と女のいざこざがあってなんてことは、関係ないんです。それがあって、むしゃくしゃして、じゃあどうして『車を痛めつければ、いちばん悔しい思いをする』なんてことが思い付くのか出来るのか。それが許せないんです」  自分より大人の二人が顔を見合わせた。  そしてその隣で翔がやや呆れた面持ちで首を振っている。
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