30.小鳥と次にやりたいこと

4/9
前へ
/316ページ
次へ
「その時に、なにもなければ今日もあのお店で働いているはずの貴女が、どうして今はいないのかお父さんからお聞きしたの」  そして、この彼女にどんなことが起きたのかわかってもらうためにも、本店に連れて行ったのかもしれない……。父がすることを娘としてそう感じた。 「それで……、あの男を突き放してなんとか逃れたと思ってのうのうとしていた自分を恥じました。あの男が接触してこなくなったから諦めてくれたんだとほっとしているその間、龍星轟のお客さんに迷惑がかかっていて、貴女の車がぶつけられて……。自分の気持ちを楽にするために安易に彼に気を許してしまったことが、こんなことを起こしていると滝田社長から聞いて、頭が真っ白になった……」  そして彼女はその時、英児父と何を話したのかを教えてくれる。  英児父は『瀬戸田という男と最近会ったりしていなかったか』とまず切り出しそうだが……。 「正直言って、彼に少しでもなびいてしまったことを知られたくないと思ったのよ。そんな軽い女だなんて、特にあの社長さんには知られたくなかった。だけど社長さんは『いきなり翔が恨まれたのが腑に落ちない、何年も会ってもいなかったのにいきなり』、自分は部下にはなんの落ち度もないと思っていると――」  上司である自分はそうは思わない、どうしてこのようなことが急に翔に降りかかったのか知りたいと、英児父は瞳子さんに強く尋ねたとのことだった。
/316ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2654人が本棚に入れています
本棚に追加