30.小鳥と次にやりたいこと

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「ただの男と女のいざこざに、どうして上司であるあの社長さんが首を突っ込んでくるのか嫌に思った。でも瀬戸田君がそちらのお店に迷惑をかけていることを教えてくれて……。そちらのお客さんに被害が出て、娘の車がぶつけられて……。そんな犯罪まがいのことに走っていたことを知った時は血の気が引いた」  彼女がそこで心苦しそうに眼差しを伏せた。 「そんな彼を追いつめていたんだと、私のせいだと、やっと自覚したの。実際に瀬戸田君にも酷いことを言ったから」  また彼女が目尻にこぼれた涙を拭った。 「だから。主人とうまくいっていない心の風穴を埋めるように、瀬戸田君の誘いに応えてしまったことも。拒絶するために翔の名を言ってしまったのも、正直に話したの。社長さん『やっぱりね』と……呆れられると思ったけれど、そうではなくて、自分の部下のせいではなかったと知ってホッとした顔していた」  そんな英児父の姿が娘の小鳥には、ふっと目に浮かぶ。部下を大事に思って、翔の心の負担を少なくしようとしてくれたその姿が。  それは翔も同じだったのか、上司の思いに触れ、その有り難さに静かにでも熱く震えているように見えた。 「私だけね。自分のことだけで、あてずっぽうに駆け回って押しつけがましいことをしているのは。そう思った。ほんとう……恥ずかしかった」  そして彼女が改めて背筋を伸ばし、小鳥と翔に向かう。 「本当に、申し訳ありませんでした。私のことはもうなにも気にしないで。主人とどうなろうとも、自分のことは自分でなんとかします」 「それでも……。別れるなんて簡単に考えるなよ」  翔のひと言に、彼女の目元が潤んだ。
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