31.愛シテアゲル

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 息苦しくて、でも、とろけそうで気が遠くなりそう。どうしたんだろう。いままでは胸がドキドキだったのに、もう違う。いまはキスをされると身体の奥がつきんつきん痛くなって、熱いものが滲みだす感覚に変わってしまった……。  その甘い疼きにとかされ、小鳥はただ、彼の肩越しに見えた月をぼんやりとみつめるだけに……。 「ずっと小鳥のその真っ直ぐさに支えてもらってばかりだった。だから、もう小鳥に負けない。まずは俺から、おまえを愛シテアゲル――」  負けない? いつからそんな勝つとか負けるに? それに、俺が十年、愛シテアゲル??  自分から溢れた気持ちを、彼がもっともっと熱くして投げ返してきた。 「翔兄……翔、」  小鳥も抱きしめてくれる彼に、腕を伸ばして抱きついた。  月夜の道後、レトロな街の片隅、暗い駐車場。白いボンネットの上で抱き合って、いつまでも唇を愛しあう。  彼の大きな手が、小鳥の肌を探している。  ふたり揃って舌先と舌先を愛しながら、小鳥から言う。 「翔兄、つれていって」  襲ってきた甘い疼きを、彼に突き破って欲しい。そんな衝動に駆られている。 「俺も。小鳥の肌の匂いが欲しい」 「私も。翔兄の熱い肌に触りたい」  それでもなかなか唇が離れない。惜しむように濡れた唇と唇を離し、ふたりはスープラに乗り込んだ。 ✿・✿・✿    港町の彼の部屋。もうすぐこことはお別れ。  今夜も彼のベッドルームは優しく甘い香り。  小鳥のための匂い――。    この前とは全然違う。カラダがじゃなくて、彼が!  
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