32.カラダも生意気

1/8
前へ
/316ページ
次へ

32.カラダも生意気

 この前は優しかったのに、ゆっくり愛してくれたのに。今日の翔兄は、意地悪な男のように小鳥に無茶を要求してくる。  可愛い可愛い小さなヒナちゃんを労るなんて、もうない。男が『オマエの身体が欲しい』と欲望を滾らせたら、こうなるんだと小鳥ははあはあと吐息をつきながら翻弄されている。  ――そう。手をついて、もっと俺の方にむけて。  ダメだよ、ダメ。やだ、何を見ているの翔兄?   なにもかも見える。可愛いのも見えているよ。  絶対に触られたくないところに、彼の指先がキスをするような柔らかさで撫でている。 「やだ、いや。翔兄……。へ、平気なの?」 「もちろん。ぜんぶ触りたい」 「い、いや。あ、いや」  そこにある秘密のひとつひとつを、彼に暴かれていく。そんなところを触る人は特殊な人だと思っていたのに、違うの? そんなものなの?  でも。この人になら。なにもかも触られてもいい、奪われていってもいい。この人だけが私の秘密の場所に触れられる。特別な人。そんな気持ちになっていく――。  そんなことは決してと思っていたことでさえ、彼と小鳥だけの秘密になっていく。彼のものになっていくという高鳴りが襲ってくる。それがまた甘い疼きに変わって、彼に強く奪って欲しいという女の欲望になっていく。  この人、男になると意地悪。清潔そうな王子様の顔をしていて、男になると意地悪。いつも小鳥が元気いっぱいなんでも飛び越えていくから、これぐらいで泣くのがおかしいとクスクス笑っている。  でも。恥ずかしいはずなのに、すべてを彼に奪われて征服され、彼のものになっていくような……。羞恥心と高揚感が綯い交ぜになって、それがまた小鳥の胸を焦がしている。
/316ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2655人が本棚に入れています
本棚に追加