32.カラダも生意気

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「翔、いっぱい愛シテアゲルからね」 「カラダも生意気だ。俺をこんなに……して……」  セックスなんて二の次だったのに。彼が致し方なさそうに呟いた。  もう戻れない。車だけの生活には戻れない。  熱くほてった女の身体を傍に眠るのは、愛車に乗っているように心地よい。  だから、早く一緒に眠れるように、俺のところにおいで――と。 ✿・✿・✿  春うらら。桜も散って、もう葉桜。瀬戸内はそろそろ初夏の気配。  今日の晩ご飯は、鳥五目炊き込みご飯と、サワラの塩焼きと、たらの芽の天ぷら。  エプロンをしている小鳥はキッチンで夕食の支度をしている。    あれから、龍星轟に瀬戸田の代理人として弁護士が来た。  英児父と被害者筆頭のランエボの高橋お父さんと、龍星轟の弁護士を交えて話し合いがもたれた。  当然、あちらの弁護士は瀬戸田を擁護するため『示談』を申し入れてきた。  だが英児父が譲らなかった。『本来なら、当て逃げの罪を問われるんですよ』と。しかもうっかり過失ではなく、狙いを定め計画していた悪質な行為。その動機も身勝手で、人のせいばかりにする自己的なものだと。  このまま示談で払えるものだけ払って、はいサヨナラでは納得できない。どうせ、また人のせいにして怒りまくって人を傷つけるに決まっている。謝罪のためのツラも見せねーで、なにをいいやがるんだ――と、さすがの元ヤンの凄味にあちらの弁護士が震え上がっていた。  それが効いたのか。彼直筆の謝罪文を後日、代理人の弁護士が持ってきた。  英児父も高橋のお父さんも呆れていた。  もうあの男はこちらに顔を見せるつもりはないだろうと。
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