32.カラダも生意気

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「なんか動機が不純ぽくない?」  彼がそこに気がついた小鳥に勝ち誇った笑みを見せている。小鳥はドキリとした。 「今日も生意気だな」  でた。生意気。でも彼が若い小鳥にこれを言うと時はもう男の顔になっている。  じりじりと迫ってくる彼にたじろいで後ずさっているうちに、小さなダイニングテーブルにぶつかった。  近頃感じている。翔はいつも小鳥を逃げないようどこかに追いつめて囲う。自分だけの、自分の腕の中だけで大人しくなる小鳥を確かめると、満足げな微笑をうっすらと浮かべる。  そんな時の翔は、王子様のようなお兄さんではなく、完全に征服欲をたっぷり滾らせている男。やんちゃ娘とつきあう男なら、これぐらいは必要と思っているに違いない。  小鳥はいつも壁とかテーブルとかベッドのシーツの上、翔の腕に囲われると男になった彼に徹底的に制圧されていた。 「大人しいな」  ほら、勝ち誇った顔。でも小鳥もどうしようもない。彼が強い征服欲を漲らせて近づいてくるとドキドキしてときめいてしまってる。こんな責めがときめくんだと、女になって初めて気がつく。  元ヤン親父の娘は、やんちゃで手に終えないお騒がせ娘。そこらへんの男友達も舌を巻く。そんな女と生きていくなら、やっぱり男は勇ましく強くなくちゃ。そんな男に制して欲しい願望があったんだと――。  翔はそれを見事に実現してくれていた。そして小鳥はいつも、そんな彼に制圧されて、ふわりと墜ちていく。  いまもそんな彼の腕に囲われて――。 「赤い小鳥はどうして、赤い……だった」
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