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それを聞いて、子供だったけれど、小鳥はもの凄く怒った記憶がある。
『なんで、セナってつけてくれなかったのよ! 父ちゃんのバカ!』
小鳥なんて、いつまでも赤ちゃんみたいな名前じゃなくて。小鳥なんて男っぽい滝田には似合わないと男子にからかわれるような名前じゃなくて。『セナ』て名前の方が可愛いじゃん。しかも、あの『アイルトン=セナ』から名付けてくれたって、如何にも車屋の娘でかっこよかったじゃん!!
誕生日なのに家を飛び出して、近くの公園に籠城したことがある。だけど、母は働きに出ていたし、父は店を離れられるはずもなく迎えに来てくれなかった。最初に見つけてくれたのは弟の聖児。だけど彼も付き合いきれなくて家に帰ってしまった。
夕方。銀パイプのすべり台の中に隠れていたら、男が顔を覗かせた。
『お前の意地っ張りは、なかなかのもんだな』
父親の英児だった。まだお店も開けているはずの時間なのに、龍星轟のワッペンがついた作業着のまま捜しに来てくれた。
それでもむくれて、膝を抱えたまま身体を硬くして出てこようとしない小鳥を見て、英児父がため息をつきながらも、お馴染みのヤンキー座りでパイプの前に座り込んだ。
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