33.ラスボス父ちゃん

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 すると母も『週末はかならず帰ってきなさい』とだけ、でもちょっと怖い顔で言われ、それから黙認してくれるようになった。  それでも、翔との話し合いで『基本は泊まらずに帰る。週末の食卓は実家で』を守るよう努力した。  そんな母に『今日、翔兄と挨拶に行きます』という話だけはしておいた。  彼と付き合い始めて三年。おそらく、英児父ももうわかっているはず。従業員の皆も父親の手前あからさまに触れては来ないけれど、影では『翔と恋仲』は会話でさりげなく交わすようになっていた。  つまり、公認の仲。でも親父さんだけが、正式に認めてない。 『どこのお父さんも一緒よ。最後まで抵抗すると思うけれど、頑張りなさい』  それが琴子母からの言葉だった。  今日は琴子母も自宅にいるので、報告する時に英児父の傍にいて助けてもらう約束もしていた。  だから大丈夫だよと、小鳥は彼を宥める。緊張する彼も信頼しているオカミさんを頼りにして、前々から覚悟していた挨拶に向かう。    龍星轟に到着して、翔がいつもの場所にスープラを駐車した。  それと当時に、龍星轟に白いスポーツカーが入ってきた。 「あれ、聖児だよな」 「ほんとだ。スミレちゃんも」  事務所正面に、白い車も停車した。  『マツダ RX-7』 聖児が選んだ愛車だった。  高校卒業と同時に免許を取得し、英児父と聖児は『愛車探しの旅』に出かけていった。いくつかネットで探し、候補にした車を現地まで確かめに行って買うという滝田父子らしい旅だった。  その聖児の希望と、英児父の眼鏡にもかなって、龍星轟にやってきたのが『マツダ RX-7 三代目』だった。
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