33.ラスボス父ちゃん

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 聖児も自動車大学校を卒業して、小鳥と同時に社会人に。昨春から龍星轟で従業員として働いている。  その聖児が、龍星轟のジャケット姿でスミレと事務所に入っていくのが見えた。 「聖児も今日は休暇だから、スミレちゃんを連れてきたんだろう。また二階の自宅で夕飯でも一緒にするんじゃないか」  スミレが龍星轟に遊びに来るのはもう当たり前で、小鳥を訪ねてきているのか、聖児を訪ねてきているのか、もうどっちでも良いというくらい、彼女が来たら両親もなんなく二階の自宅に迎え入れていた。 「そうだね」  でもだったら、事務所に入っていくのは、小鳥にとってはなんだか違和感だった。  聖児が大阪の自動車大学校に行ってしまったので、ふたりは遠距離恋愛だった。だけれど聖児の帰省には、二人はセブンに乗ってよく出かけていた。  そのうちに聖児の方から『スミレ先輩とつきあっている』と龍星轟に就職する前に報告。その時は琴子母よりも英児父が『スミレちゃんは大事な大事な野口さんの娘さんだからな』とくどくど説いていた。 「さあ、気合い入れていくか」 「よし、龍の父ちゃんに負けない」  こちらはこちらで集中しなくてはいけない大事な時。  スープラから、スーツ姿の翔とおめかしをした小鳥が降りてきたので、ピットにいた従業員の男達が外に出てきてくれた。 「翔、ついにか。いよいよだな」 「小鳥、負けるなよ」  兵藤のおじさんと清家のおじさんがガッツの拳を向けて、激励してくれる。  マコちゃんにノブ君も『頑張れ、兄貴。小鳥ちゃん』と応援してくれる。  事務所のドアを開けると、矢野じいと武智専務も、なにもかもわかった笑顔で出迎えてくれた。
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