33.ラスボス父ちゃん

8/8

2648人が本棚に入れています
本棚に追加
/316ページ
 そして社長デスクの英児父のところへ。 「おう、なんだ。おまえ達まで」  翔と小鳥の出で立ちを見た英児父が、やはり眉間にしわを寄せた。あのガンとばしの眼差しが翔に向けられる。 「聖児、ちょっと待てや。姉貴の話が先だ」  翔と小鳥がそこへ向かう前に、聖児とスミレが既に英児父の前に並んでいた。  この時、小鳥は妙な予感がした。  聖児は、大人の出で立ちをしている翔と姉を見て、ちょっと焦った顔に。  そんな彼氏を知ったスミレが申し訳なさそうに言った。 「聖児君、また今度にしよう。ほら、お姉さん。今日は大事な話があるみたいだし」  スミレも今春卒業をして念願の保育士になり、大学系列の私立幼稚園の教員になったばかり。  彼女にも『近いうちに、両親に結婚前提のお許しをもらいに行くんだ』という話は女子会の時にしていた。でもそれが本日とは知らせていない。  やや動揺した様子の聖児だったが、急に毅然とする。 「いや、俺達が先に着いたんだ。引き延ばしはだめだ」  引き延ばしはだめってなに? 小鳥の嫌な予感がますます膨らんだその時、聖児は父親に言い放つ。 「親父。俺、スミレと結婚する」  そこにいる誰もが一瞬だけ目を丸くした。一瞬だけ。  小鳥と翔も顔を見合わせ、でもちょっとだけ『くす』と微笑みあう。すぐに先へ先へと行きたがる聖児らしい先走りだと――。  だから英児父も落ち着いていたし、子供の頃から見せてきた元ヤンの凄味で息子を睨むだけ。 「おめえ、話になんねえ」  そこどけ――と、立ち上がった英児父が聖児の肩を払おうとすると、再び聖児が父親に真向かった。   「子供が出来たんだ。スミレに俺の子が」  はあ!? 今度こそ、事務所にいる大人達が揃って喫驚の声をあげた。 ※次回、最終回です  
/316ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2648人が本棚に入れています
本棚に追加