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34.お嫁に行かせて!!
「まままま、まて、まて、聖児。おめえ、子供って……」
さすがの英児父も仰天したのか、元ヤン親父の威厳もどこへやら。あとずさって、ゴミ箱にぶつかって、転びそうになるぐらいによろめいた。
そんな父親を差し置いて吠えたのは、やっぱり矢野じい。
「こんの、聖児! おまえ、なにやっとんじゃ!! おめえ、働き始めてまだ一年だろ」
「そ、そそそ、そうだよ。聖児! スミレちゃんだって就職したばかりなんだぞ」
武ちゃんまで慌てふためいて、あたふたする始末。
そして、小鳥の隣で翔兄が目元を覆って項垂れ、『先にやられたー』と脱力している。
小鳥も呆然。え、今日って、私がドキドキしてお父ちゃんを驚かせて怒らせる覚悟できたんだよね? だよね? もう当初の目的に覚悟がすっ飛んでいってしまって、どうしていいのかわからない。
「だから俺はスミレと結婚する。俺は構わねえ。ずっと、そのつもりだったから!」
バンと大きな音が事務所に響いた。英児父がもの凄い燃えさかった眼で机に手をついて、聖児を威嚇する。
「このバカ息子。おめえに言ったよな! スミレちゃんは、野口さんの大事な大事なお嬢さんだってことを! 一人娘だぞ、おめえみたいな半人前にくれてやるなんて、俺だったら我慢できねえわ!!」
「だよな! 元ヤンのクソ親父のバカ息子だもんな! てめえのせがれも信じられねえバカ親父だもんな!」
あんだと、このクソガキ!
うっせい、クソ親父!
ついに同じ背丈の父子が襟首ひっつかみあいの、とっくみあいを始める。
うわー。似たもの親子が本気の激突を始めちゃったと、小鳥は青ざめる。
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