34.お嫁に行かせて!!

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 これって、聖児のとばっちり? スミレちゃんのご両親に申し訳ない。俺だったらこんな半人前が娘をもらっていくだなんて許さない! あそこまで息子につきつけた後、娘の小鳥が『彼と一緒になることを許してください』なんてお願いして、手のひらを返したように『いいぞ』なんて言えるわけがない! と、いうことに気がついた。 「小鳥」  涙を滲ませた小鳥の顔を、翔が覗き込む。  彼が小鳥の手をしっかりと握って言った。 「俺も、今日しかあり得ない」  小鳥の手をぐっとひっぱりながら、聖児と父が睨み合っている間に、黒いスーツ姿の翔が立ちはだかる。 「社長。いえ、お父さん。俺も今日しかないと思って来ました」  小鳥の手を握ったまま、翔は英児父に向け、深々と頭を下げる。 「小鳥さんをください。お嬢さんと、結婚させてください」  小鳥はギョッとし、飛び上がりそうになった。 『結婚前提の同棲生活をしたい』というお許しだったはず? 「彼女には夢があります。だから、本当は彼女がもっと経験を積む時間を経てからと思っていましたが、それは俺が夫になっても、彼女が妻になっても、そばで見守ってあげられるなら、変わりはないと思っています」  お願いします!   もしかして翔は、聖児に感化されちゃったとか?  それとも最初からそのつもりだったのか?  とにかく、ふたりの予定がかなり飛躍しちゃっていた。 「うわ、翔兄。かっけええ!」  こんな状態にひっかきまわしてくれた聖児が大人の男の挨拶にわくわくと目を輝かせているから、小鳥はもう呆れて呆れて気が遠くなってきた。  翔の決死の挨拶の後、事務所がシンとした。
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