34.お嫁に行かせて!!

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 それに比べて、翔の実家である桧垣家は、温泉街上の閑静な高台にあって、彼の両親は穏やかで優しげで静か。そこのひとりっ子。  合うのかな、こんな家の娘と……。小鳥はいまでも、やはり翔は自分には高望みの人だったかと不安になる時がある。  なのに潮風にジャケットの裾と小紋柄のネクタイをはためかせ、翔は腰をかがめてクスクスと笑っている。 「翔?」 「いや、あのさ。なんか、すごかったな。俺、滝田家の一員になったんだって、ほんとそう思えた」 「……おかしいの?」 「楽しいんだよ。俺、スミレちゃんと一緒なんだよな。静かな家庭のひとりっ子だったからさ。滝田家のあの賑やかさが羨ましいというか」 「そ、そうなの?」 「もう、ほんっと聖児にはやられるな。まさか結婚どころか親父なるって、どんだけ俺達を一気に追い越していくんだって」  本当だった。そういえば、弟にはやられっぱなし。奥手なスミレよりは早くロストヴァージンができるだろうと思っていたら、手早い弟のせいで追い越されているし。それどころか結婚も出産も親になるのも先を越されそう……。  でもなんだか、聖児らしい。あの弟こそ、ロケットと呼ばれる父親にそっくりなんだから。そう思ったら笑えてきた。 「もう、ほんとだね」 「だろ。あれもまた手に負えない義弟になりそうだな」 「そっかあ、弟になるのか。あ、じゃあ、スミレちゃんは本当の妹になるんだ」 「ついでに。俺と小鳥はいきなり伯父さんと伯母さんに昇格だ」 「うわ~。やっぱりうちは、めまぐるしいね」  ふたりで笑いあった。
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