4.ハジメテの夜

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 そんな彼を見て、小鳥はちょっと憎らしくもなる。思いきりは『小鳥らしい』かもしれないけれど、本当は、本当は、すごくスゴク凄く恥ずかしいのだって、わかってくれていないと密かにむくれる。  笑った彼も、遅れてネルシャツを脱ぎ捨てた。こちらも思いきりがついたのか、男らしく荒っぽい脱ぎ方。  タンクトップ一枚とショーツだけになった小鳥と、ボクサーパンツだけになった素肌の翔兄が向かい合う。  ……初めて、見た。彼の、素肌、裸?  思いきって服を脱いだはずの小鳥だったが、思わぬ男性の出現に、固まってしまった。  やっぱり。この人は父親と同じ仕事をしている人だと思った。  程よい胸筋に、割れるまではいっていないけれど引き締まった腹筋。そして筋肉がついているとわかる程度の逞しい腕。艶やかな肌がうっすらと汗を滲ませているのがわかり、彼の身体も火照っているとわかる。  しかも――。汗の匂いが、小鳥がよく知っている男性の匂い。それを彼から強烈に感じている。  男――。これが男だと、小鳥はもう知っていた。この匂いを強烈にはなっている男に育てられたから、この匂いにはいつも敏感だった。それがいま小鳥を急激に襲う。  目眩がする。甘い部屋の匂いと、男の匂いが、小鳥の中にある硬くなっていたものをほどいていく……。 「小鳥?」  どんな顔をしていたのだろう。たぶん馬鹿みたいにうっとり惚けてただただ翔を見つめていたのだろう。彼が心配そうに小鳥の顔を覗き込んだ。 「なんだよ。そんな顔するなよ。見慣れているんだろ。『お父ちゃん』のとか、弟の」 「そ、そうだけど。ぜ、全然違うよ」
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