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「だって、翔兄が優しく優しくしてくれたこと、ちゃんと感じていたよ。私こそ、ごめんね。もう少し我慢したらいいのに。ごめんね」
「まあ、今日はお互いの裸をお披露目ってことで」
抱きつく小鳥の黒髪を何度も何度も撫でながら、軽やかに笑ってくれ、小鳥もほっとする。
「でも。かっこわるいね、私。恥ずかしいよ」
ベッドから落ちるだなんて。しかも頭から。裸で股もひらけちゃって、そんな女を見たら色気もなにもなくって、雰囲気も台無し。もう恥ずかしくて顔から火が出そう。
頭の上から懸命に抑える笑い声が漏れて聞こえた。彼がくすくすと笑っている。
もう本当にムード台無し。大人のお兄ちゃんに笑われている。
ああ、もう駄目だ。これからずうっとお兄ちゃんに、大事な最初のエッチの想い出として、あの無様な股開きの転落姿を思い出されてしまうんだ! このまま小鳥は逃げ出したくなる。MR2に飛び乗って遠いところへすっ飛んでいきたい。
どうしていつも自分は女らしくないんだろう。いつもなにかしらやらかして、皆を驚かせてきた。今夜も、大事な大事な時間だと覚悟して、いつものようにがざつにならないよう気をつけてきたつもりだったのにと、小鳥はしょんぼりと黙り込む。
「もしかして気にしているとか」
彼に顔をのぞかれ、小鳥はふいと彼の胸の中に隠した。
「えっと。うん、びっくりしたし……。でも、俺がよく知っている小鳥のままで、ほっとした」
黒髪のつむじへと、翔が優しく頬ずりをしくれる温かみが伝わってきた。
「子供っぽいね、私」
「いまはまだ、それが小鳥だと思っている。それに俺はそんな小鳥といたいと思ったんだから」
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