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「意地悪? 言いたいけれど言えないことがあって、俺がそれを言わせようとしているってことなのか。だったら、言ってごらん。恥ずかしがって、これからもずっと俺に遠慮して、通じ合わないセックスを繰り返していくことになるんだけどな……」
うー、絶対に『吸って』と望んでいることをわかっている! 小鳥の口からそう言わせたくて攻めているんだと顔をしかめた。
だけど、初めての日にそれは惨いと勘弁してくれたのか、小鳥が望んでいるとおりに彼の口が静かにでも強く、小鳥の紅い胸先を吸ってくれた。
きゅっと走る甘い痛みは……。岬の日の甘い秘め事を思い出させてくれる。あの時に知ってしまった、甘い痛み。それを小鳥は泣きたい気持ちになりながら、じんわりと感じている。
「気持ちいい、スゴク」
「そうか。よかった。小鳥……、俺な……」
「うん、なに」
何かを伝えたいようなのに、翔はそこで黙って何度も何度も愛してくれる。そんなじっくりとした時間に、小鳥もすっかりとろけてきていた。
「俺は、知っている。普段の小鳥は、ボーイッシュにシャツにデニムだけれど。ふとした仕草や顔つきが、たまーにスゴク女らしくなる瞬間がある。その時のおまえ、普段がボーイッシュだから、すっごい女の匂いを放つ。その時、俺は無性に心配になる」
ど、どうして? 小鳥は胸元から離れない男の黒髪を、抱きしめ問い返した。
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