5.ハジメテの子が、ハジメテ

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 じんわりと彼の肌の体温が、小鳥の身体のあちこちに残っている。  その温かみを実感しながら、静かに衣服をまとう。  背中合わせにして、翔も元の姿に戻っているのを振り返った肩越しに確かめた。    まだまだ恥じる小鳥を知ってくれているのか、裸からの着替えを見ないように気遣ってくれている。彼はいつもそんな接し方がとても丁寧。ずっと昔からそう。何事にもお兄ちゃんは丁寧に接してくれ、乱暴にしない。  それは上司の娘だからだと思っていたこともある。そして、いまのこれも……結局、最後は、上司の娘だから? 乱暴に貫けなかったのも、結局は?  落ち着くと、ふいにそんなことが頭に過ぎった。  タンクトップにデニムパンツ、最後にシャツを羽織っているところで、ふわっと慣れない匂いに包まれた。  翔の肌の匂いか、髪の匂いか。よく知っている彼の匂いだった。それが今日は小鳥のそばにまとわりついている。小鳥はひとしれず、そっとその香りを抱きしめてしまう。  身体が熱い。身体の奥がうずいたまま。あのまま貫かれても良かったのに。でも今夜はもう、小鳥がベッドから落ちてからはそのムードが壊れてしまった。 「ケーキ、食べるだろ」 「うん」  翔がベッドルームから出て行った。  初めての夜は、肌の触れあいだけで終わった。    誕生日のケーキを食べる時には、もういつものお兄ちゃんと小鳥だった。  でも小鳥は嬉しかった。お兄ちゃんからケーキを切り分けてくれ、小皿に取ってくれて、紅茶までいれてくれた。  一緒にお祝いのケーキを食べながらの会話も、いつも夜遅くまでドライブをしているふたりのままだった。
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