5.ハジメテの子が、ハジメテ

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 玄関まで見送ってくれたのに、まだ小鳥が玄関のドアを開けて出て行ったわけでもないのに、彼はそのままリビングのドアの向こうへと姿を消してしまった。  え。こんなお兄ちゃん、ちょっと初めて? 小鳥は唖然としていた。    お兄ちゃん、おやすみなさい。と一声かけてから玄関を出た。  エレベーターを降りて、急いでMR2に乗り込んだ。  運転席に座っても、エンジンもかけず、小鳥はその箱を急いで開けた。  見なくてもわかる箱。でも信じられなくて。だって中身はそうとは限らない。この箱なら、ピアスかもしれないし、ネックレスかもしれないし、ブレスレットかもしれない。  なのに期待している自分はやっぱり女の子だと思った。その箱を見て、女の子が一番期待するもの……。  包みを助手席に放って、リボンも放って、白い箱が出てきて紙の蓋を開けて、最後にやっぱり出てきたキラキラな星が描かれているジュエリーボックス! 「待って。落ち着いて。そんなわけないじゃない」  車の中で一人、小鳥は馬鹿みたいに笑い飛ばした。  ばっかみたい。私ったら、こんな時だけか弱い女の子の発想になっちゃって。馬鹿みたい。  そんなこと、あるはずない。だって、まだ想いが通じて五日の、まだ二十歳になったばかりの子供みたいな女の――。  きっと最近集めているピアスやネックレスだと思って蓋を開けた。  箱の真ん中に。夜明かりに光る銀色のリング――。 「う、嘘。嘘だあ」  小鳥はMR2のハンドルに額を押し付けて脱力した。 「こんな私に、指輪……」  逆に泣けてきた。  もしかして。お兄ちゃんこそ、ものすごく力んでいたのかも?
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