5.ハジメテの子が、ハジメテ

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 恋人に対してこれまでクールだっただろうお兄ちゃん。そんなお兄ちゃんが、歳が離れている女の子だからこそ、とっても気遣ってくれたり、『今度こそ、女の子の気持ちを無碍にしない』と意気込んで、買いに行ったこともないバースデーケーキとか、二十歳の誕生日だからと気合いを入れた大人っぽいプレゼントとか――。  あんなに照れて。怒ったみたいな顔で最後まで小鳥と一緒にいることが居たたまれずに素っ気ない態度になって。  あれって、すっごく頑張ってくれていたのかも。スマートな大人の男、優しいお兄ちゃんだったけれど、男としてはすごくすごくらしくないことをやっていたのかも――。小鳥にはそう思えてきた。 「ありがとうお兄ちゃん。大切にします」  彼の部屋へと両手で掲げて、小鳥はぺこりと礼をする。  さすがに、指にはめるまでは照れくさかったのかな?  そう思いながら、小鳥はMR2のエンジンをかける。    助手席に、指輪の箱。  嬉しくて、嬉しくて、もうこのまま海までアクセルを踏み倒してぶっ飛ばしたい!    でも。小鳥の耳に蘇る彼の声。  ――やんちゃするなよ。  『やんちゃな小鳥もいいけれど、さらに女の子らしくなりますように』。  彼の願い通り、この夜は大人しく『龍星轟』まで真っ直ぐ帰った。  
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