6.お兄ちゃんに限って、そんなこと!

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 ただこの女子大。構内はとても静かで綺麗で広いのだが、一歩外に出るとけっこう田舎。おっとりとした女の子や堅実で落ち着いた女の子が多く『お嬢様学校』と言い継がれてきた穏やかな環境は良いのだが、『街でイマドキの女子大生』とは言い難いところだった。  雨が強くなる中、小鳥は農道に近い一本道を抜け、やっと大きな国道に出る。走っているうちに国道の側は海になる。  せっかくの海の色が、雨で濁る。空も暗くくすんでいる。波も高く、青いMR2が走っているすぐ下まで打ち寄せてくる、ガードレールの下はすぐ海という古い国道だった。  忙しく動くワイパーを目の前に、狭い道幅と車線をスピードを抑えて走る。  その途中、オールドアメリカンをイメージした老舗のレストランが見えてきて、小鳥のMR2はそこに入った。  駐車場にはすでに見覚えのある黄色のSUV車、トヨタのFJクルーザーがあった。  その隣にMR2 を駐車させ、小鳥は雨の中、店内へと急いだ。  このレストランは小鳥が子供の時からここにある。内装もオールドアメリカンで統一されていて、どこか懐かしい雰囲気で溢れている。  この近くに、地元の人間が集まる海水浴場があり、その帰りに父と母がこのレストランに入って一家で食事をした想い出があった。  とても雰囲気のある目につくレストランなので、平日は若い男女の出入りが多い。男性との待ち合わせとか、デートとかで入る若者も多い。  そう、今日の小鳥のように……。  赤いギンガムチェックのテーブルクロスがかけてあるテーブルで、ひとり、珈琲を飲んでいた男性が小鳥を見つけて微笑みかける。 「雨、大丈夫だったか」 「宮本先輩、早かったですね」
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