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浅黒く日に焼けた肌に、白い歯を見せ、溌剌とした笑顔を見せるその人の向かい席へと小鳥は向かう。
向き合って座ると、スタッフがオーダーを取りに来る。
「紅茶と、……」
メニューを眺める。なんといってもここのイチオシは『アメリカンタルト』。サイズも少し大きめ、ストロベリーにチェリー、パンプキン、そしてオレンジ、こちらもオールドスタイルのタルト。
「ストロベリーパイを一緒に」
かしこまりました。と、スタッフが去っていく。
「ここのタルトパイ、デカイだろ。俺はムリ」
目の前の先輩がため息をついた。
「そうなんですよね。アメリカンサイズ。美味しいんだけど、最後、ちょっとお腹が苦しくなっちゃう」
「で。最後に『食べきれない~。お願い、食べて』と言ってくれると、そこが可愛くて、それなら食べちゃうかな。俺」
「宮本さんは、ほんと相変わらずですね~」
非常に慣れた調子で軽くいう。既によく知っている先輩の言いぐさだが、小鳥は苦笑いを浮かべてしまう。
「小鳥は、そうは言ってくれなさそうだな。うん、でも、小鳥はそのままがいいな。それが小鳥って感じ。甘えているお前なんか想像もつかない」
「そんな私だから、先輩とこうして話し合えるんですよね」
はいはい、私は女らしくありませんよ。と言い捨てながら、小鳥は肩にかけていたトートバッグからスケジュール帳を出して広げた。
そうでなければ、話し合いなんかそっちのけ。この先輩はすぐに女の子の手を握って、こうだよね、ああだよね、君可愛いねとやり出すのだから。
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