6.お兄ちゃんに限って、そんなこと!

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「そろそろスミレや後輩に運営を頼もうかと思うんだけど、そちらの『ナナコ』はどう考えているんだ」 『ナナコ』とは、小鳥と花梨が立ち上げた『ドライブサークル』のこと。小鳥の親友、花梨が名付け親。偶然だったが、MR2のナンバーの一部が『775』。それを見た花梨が、キャプテンの車のナンバー、そしてラッキーセブンの『7』を並べる女の子達という意味も含め『ナナコ(775)』と名付けた。  車屋と走り屋兄貴に親父達には『エンゼル』と呼ばれ、サークルの仲間内では『ナナコ』と呼ばれる車になってしまった。 「花梨は地元に残るのか」  先輩の問いに、小鳥も答える。 「花梨ちゃんは地元狙いでお目当ての企業もしぼっているんだけど、私は、まったくのんびりかな」  宮本先輩が笑う。 「これまた小鳥らしいよな。『目指すところはひとつ、もうずっと前から決まっている。絶対にぶれない』だよな。だからいまのバイトをしているんだから」  そう言いながら、先輩がいつになく優しい眼差しで小鳥を見て黙ってしまった。小鳥も訝りながら、何を思っているのだろうと首を傾げる。 「いいな。小鳥のその真っ直ぐなところ。誰もがそこに惹かれてしまう。俺も好きだよ。小鳥とサークルの提携をした時、そこがいいなと思ったのは本当だし」 『好きだよ』。ストレートに言われても、小鳥は驚いたり照れたりはしない。この先輩とは既にお互いの何もかもをわかって『男と女にはならない』という結論を出している間柄。それでも『好きだ』と言ってくれるのは、恋などではない、それはもう既に『友情』だと小鳥は思っている。  ――友情か。  そう思う時、小鳥には宮本以外にもうひとりの男性が思い浮かぶ。
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