6.お兄ちゃんに限って、そんなこと!

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 高校の同級生、竜太を。  今年は帰ってくるのかな。彼はいま、県外の大学にいる。 「少し早いけれど『花見イベント』の計画を立てておこうか」  カントリーレストランでお茶を挟んで向かい合う国大生の彼と、待ち合わせた本題はそれだった。 「そうですね。開花はいつかもうわかるかな」 「調べてみよう」  さらに宮本先輩が持っていた鞄から、タブレット端末をさっと取り出して手際よく検索する。 「例年通りみたいだな」 「三月末から四月の初めですね。では、そのころに狙いを定めて……」  スケジュール帳に予定を書き込みながら、話し合いを進めた。  小鳥のスケジュール帳はこうして常にいっぱい。真っ白な日なんて一日としてない。  近ごろは自宅にいる時間の方が短い。夜帰ってきて寝るだけと言っても過言ではない。  それでも、忙しい両親には一日の始めと終わりぐらいは顔を見せておきたい。そしてそれは小鳥も同じ。自分もそれだけで、どこか安心して外に飛び出していける。  それをひしと感じるようになったのは、車に乗るようになってからだ。  あの車バカな親父さんが、娘の愛車まで、これまた娘のように手入れをして送り出してくれるようになってから、強く感じるようになった。 「誕生日会、どうだったんだ」 「いつもどおりでしたよ」  でもふっと花梨と勝部先輩が親しげに二人きりで帰った様子を小鳥は思いだしていた。しかも、なんだか避けられてるかと思いたくなるほど、今日は一切、彼女の姿を見なかった。 「だろうなあ。また小鳥に仕切や面倒を任せて、自分たちは気ままにってやつだろ」 「そうでもなかったですよ。なんだか知らないけれど、昨日は日付を越えなかったし」
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