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「でもよ。今日、サークルでパーティをしてくれるんだろ。絶対に飲まされるぜ。ハタチの記念にってさあ。悪ふざけで、飲むまで煽られて追いつめられてさあ」
「そんな強引な飲ませ方は、最近は禁止されているし、マナー違反として白い目で見られるよ。プライベートの遊びでも、守れなかったら学校も厳格に処分するようになっているでしょう。そういうやり方をするサークルのリーダーは管理能力がないと批判されるし、就職活動にも影響するんだよ」
「なに熱くなってんだよ。車屋の娘が捕まったら恥ずかしいから、捕まるなよって言っただけじゃんかよ」
玲児は素直におめでとうと言ってくれるのに。この生意気な弟はほんっと口ばかり達者で素直じゃない。
「そうだ、そうだ。スミレちゃんが狙われやすいから、気をつけておくね」
生意気な口を制するのにいちばんの殺し文句はこれ。『スミレちゃん』。すると、あんなに粋がっていた聖児がムキになって言い返すこともなく、むっつり黙り込んでしまった。
「安心したわ、昨今の大学生の方がことの重大さはわかってくれているようでよう」
黙って珈琲カップを傾けていた英児父が新聞をたたんで、子供達へと向かう。
「小鳥、ついに二十歳だな。おめでとう」
改めての言葉に小鳥も背筋が伸び、座っている姿勢を正した。
「ありがとう。お父さん」
「今日はサークルで祝ってくれるんだな。では、家族での祝いは次の週末にしておくか。いいな、琴子」
キッチンで小鳥の紅茶を入れてくれている眼鏡の母がにっこり微笑む。
「そうね。お祖母ちゃんも楽しみにしていたわよ。みんな、何が食べたい」
末っ子の玲児が開口一番、元気よく答える。
「お祖母ちゃんのバラ寿司」
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