7.エンゼル、ごめんなさい

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 やっとダム湖の駐車場に来て、小鳥はひっそりと片隅に停車させる。ランサーエボリューションがそのまま気がつかずに走り去ったのを確かめたら、翔に連絡をしようと……。  だが小鳥は恐怖を覚えた。白いランサーエボリューションが駐車場に入ってきたのだ。  しかも徐行してこちらに向かってきている。小鳥がこの駐車場に入ったことも見逃さず、なおかつ、逃がさない。徹底的にやりこめようとしている?  ――狙われている。  走りで気が済まなかったのか。闘争心のコントロールが効かない質の悪い走り屋がやることは『車を潰す』こと。  ヤンキー男達が、勝った負けただけのプライドをかけてやりすぎることがあるのはよく聞くこと。だが、小鳥の知り合いは皆、車が好きで走っている生粋の走り屋だけ。  鬼ごっこのように、追いかけっこをするみたいに抜き抜かれつ走りっこをすることはあっても、相手の車を潰して勝ち誇るような闘争心剥き出しの仲間はいない。  近頃、この峠に龍星轟顧客を中心としたグループが集まっている。それを聞いて他の走り屋が集まってきて、また逆に英児父の店へとやってくるというそんな良い流れができていた。  それを良く思わないヤツの仕業?  気を抜かず、小鳥はそっとサイドブレーキを落とし、ギアを握り、いつでも走れるようスタンバイをする――。  MR2を見つけたランエボが、真っ正面にいる。  小鳥は窓を空かす。向こうのエンジン音を聞くため。  真っ正面にいるランエボが、激しくエンジンをふかした。  ブウン、ブウン、ブウンブンブン、ブウン。明らかにこちらを威嚇している。  後ろ足で砂を蹴り、いまにも走り出しそうな馬のよう。
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