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だが父もそのママバッグを見て、ため息をついた。
「いまどきのママバッグは洒落てんな。そりゃ、わからねえわ。仕方がねえ」
ダイニングのテーブルにオムツと哺乳瓶が並べられる。
「粉ミルクがないな。切らしたのか。水筒の湯もなくなっている。ほんとギリギリでおまえんとこ訪ねてきたんだな」
あるのはオムツと汚れたままの哺乳瓶が二本だった。
「この様子だと、家を出てあちこち赤ん坊連れ回して、でも家に帰りたくなくておまえのとこに衝動的に来た可能性が高いな。旦那も心配して探しているんじゃないか。翔、おまえ、辛いかもしれないが、旦那の勤め先とか知っているか?」
「サークル仲間繋がりで嫌でも聞かされて知っていますけど。ですが、いまご主人は出張中で家で一人きりだったそうです」
マジか。英児父はますます居たたまれない顔で頬を引きつらせた。
「じゃあ。瞳子さんの実家だ。知っているだろ」
「……ご両親もちょうど、海外に旅行に行っているそうで、来週にならないと帰ってこないそうなんです」
また、英児父がどうしようもないとばかりに表情を崩した。
「ってことはよう。一人きりだったってことか。『旦那の実家』は……、やめておいた方がいいようだな。ああ、だいたいわかったわ。仕方ねえ。しばらく落ち着くまで一人にしといてやりな」
それまで俺達でこの子をなんとかしよう。英児父が動き出す。
「翔。ミルクをつくるから湯を沸かせ」
「はい」
そして英児父は小鳥が抱いている赤ちゃんを軽々抱き上げた。
「おめえ、頑張っているな。偉いぞ。待ってろ。おっちゃん達がちゃんとしてやるからな」
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